現在から138億年前へ — 起源を遡る旅
あなたの体を構成する元素たち。それらはいつ、どこで、どうやって生まれたのか。科学が解き明かした壮大な物語を、証拠とともに辿ります。
今、あなたはこの文章を読んでいます。あなたの体は、約60兆個の細胞でできています。そしてそれらの細胞は、原子でできています。
これらの元素は、いつ、どこで生まれたのでしょうか? 時間を遡って、起源を探っていきましょう。
私たち人類は哺乳類です。そして哺乳類が繁栄できたのは、6600万年前の大量絶滅があったから。恐竜が絶滅し、哺乳類の時代が始まりました。
生命の歴史は、5回の大量絶滅を経験しています。それぞれの危機を乗り越えて、生命は進化し続けてきました。
化石記録の断絶、地層中の化学組成変化、酸素同位体比の変動などが、これらの絶滅イベントを裏付けています。
大酸化イベント(GOE: Great Oxidation Event)。シアノバクテリアの光合成により、大気中の酸素濃度が急上昇。地球の環境を根本から変えました。
シアノバクテリアが光合成で大量のO₂を放出。それまで還元的だった大気が酸化的に。
嫌気性生物の大量絶滅。しかし、これにより複雑な生命(真核生物)が進化する道が開かれた。
最初の生命はどこで、どうやって生まれたのか。いくつかの有力な仮説があります。
深海の熱水噴出孔周辺で、化学エネルギーを利用して生命が誕生した。
RNAが触媒と遺伝情報の両方の役割を担い、最初の自己複製システムが生まれた。
生命の種は宇宙から隕石に乗ってやってきた可能性。
太陽系の形成から約5000万年後、地球が誕生しました。原始太陽系円盤のガスとダストが集まり、微惑星が衝突・合体を繰り返して地球になりました。
原始太陽系円盤から微惑星が衝突・合体を繰り返し、約1億年かけて地球サイズの天体に成長。
ジャイアントインパクト説 — 火星サイズの天体が原始地球に衝突し、その破片から月が形成された。
では、地球を構成する元素はどこから来たのでしょうか?
地球を構成する元素のほとんどは、恒星の内部や爆発現象で作られました。「私たちは星屑でできている」というのは、科学的事実です。
H→He→C→O→...→Fe。恒星内部の高温・高圧で元素が順次合成される。鉄までは核融合で作れる。
C, O, Ne, Mg, Si, S, Fe
鉄より重い元素の一部は、超新星爆発の衝撃波で作られる。s過程(遅い中性子捕獲)も寄与。
Fe, Co, Ni, Zn, Sr
金・白金・ウランなどの最重元素は、中性子星合体時のr過程(速い中性子捕獲)で生成。
Au, Pt, U, Th
宇宙の始まり。最初の3分間で、水素・ヘリウム・リチウムが生まれました。それ以外の元素は、このときはまだ存在しません。
75%
水素(H)
24%
ヘリウム(He)
<1%
リチウム(Li)
ビッグバン直後、物質と反物質は同量生まれたはず。なぜ宇宙は物質だけで満たされているのか。その答えは「対称性の破れ」にあります。
CP対称性の破れにより、物質と反物質のふるまいにわずかな違いが生じた。10億分の1の非対称。それが宇宙の全ての物質の起源。
全てが等しかった。物質も反物質も、時間も空間も。それが始まりの始まり。
シンメトリアの世界。完璧な対称性。そこにブレイキアが現れ、対称性を破った。そして138億年の時を経て、私たちはここにいる。
これは科学と哲学の境界にある問いです。現在の物理学でも完全には答えられていません。新しい物理法則、未知の粒子、まだ発見されていない対称性の破れ...。探求は続きます。