"The greatest medical holocaust in history" — John Barry, 2004
H1N1 は受容体結合 → 複製 → 免疫回避 → サイトカインストームの4ステップで宿主を破壊する。
HA は気道上皮細胞表面のシアル酸受容体に結合。結合後エンドサイトーシスで取り込まれ、エンドソームの酸性環境でHA2サブユニットが変形し膜融合を引き起こす。
1918年型 H1N1 の HA は α-2,3(鳥型)と α-2,6(ヒト型)両方のシアル酸に結合可能。これが異常な伝播力の一因とされる。
NA は複製後に新粒子を宿主細胞から切り離す役割。オセルタミビル(タミフル)はNA阻害剤。
タミフル・リレンザ・イナビルはすべて NA 阻害剤。NA の触媒部位(保存領域)に結合してシアル酸切断をブロックする。
通常のインフルエンザは高齢者・免疫弱者を狙う。1918年型は健康な若年成人(20–40代)の致死率が突出して高かった。原因はサイトカインストーム。
「体が健康であればあるほど、免疫系は激しく応答する — それが致命的になった」— これが通常の『高齢者・小児』死亡パターンとは逆の W字型致死曲線の正体。
通常インフルエンザ(U字型)と1918年型(W字型)の比較。20–40代に第3のピークが出現。
インフルエンザが「毎年変わる」のはドリフト。パンデミックを起こすのはシフト。
1918年パンデミック株は鳥インフルエンザがヒトに直接適応した可能性が高い(豚経由の再集合という説もある)。2005年、タウベンベルガーらが再構築した1918年株のゲノムがこれを示唆した。
1918年秋、同じ流行波を受けた2都市が全く異なる判断を下した。結果は公衆衛生史に刻まれた対照実験となった。
「パレードは20万人の市民を集めた。6週間後、フィラデルフィアは死者を埋める場所がなくなった。」— ジョン・バリー『グレート・インフルエンザ』
疫病・毒物4件と共通5軸で比較。スペイン風邪 H1N1 をハイライト表示。
| スペイン風邪 H1N1 |
ヒ素 As₂O₃ |
ペスト Y. pestis |
天然痘 Variola |
マラリア Plasmodium |
|
|---|---|---|---|---|---|
| カテゴリ | 疫病 | 毒物 | 疫病 | 疫病 | 疫病 |
| 推定犠牲者 | 5000万〜1億人(1918-20) | 数百万人 | 7500万〜2億人(中世) | 3〜5億人(20C) | 数億人(累計) |
| 致死性 | CFR 2–3% 若年者で高い |
LD50 14.6 mg/kg | 致死率 30–90% | 致死率 30% | 致死率 <1%(現代) |
| 機序 | HA/NA + サイトカイン ストーム |
PDH阻害+ ヒ酸分解+ROS |
T3SS免疫回避 内毒素ショック |
免疫破壊 全身性炎症 |
赤血球破壊 脾腫・脳症 |
| 止めた人 | タウベンベルガー 2005 ゲノム解析 |
マーシュ 1836 |
北里/イェルサン 1894 |
ジェンナー 1796 |
屠呦呦 1972 青蒿素 |
| 現代の転用 | mRNA ワクチン技術 の礎 |
白血病治療薬 | 抗生物質開発 | 根絶(1980) | ACT 世界標準治療 |
| 歴史的インパクト | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 機序の複雑さ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 科学への貢献 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 物語性 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 現代の意外性 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 合計 | 22/25 | 24/25 | 21/25 | 22/25 | 24/25 |